本と出会ったきっかけが思い出せない・・・
この本、ぜひ読んでみたいと思って
わざわざ日本のY嬢にお願いして船便で送ってもらった。
キンドル版がなかったし
日本からの航空便は去年からストップしたまま。
そもそもこの本を知ったきっかけすら思い出せない。
おそらくネットで紹介されてたとか
誰かが本かネットでおすすめしていたとか
そういうことだったと思うのだけど。
ネット検索するけどさっぱり分からない。
どんなにいい本でも絶版になる時代
2002年に執筆されて2003年に出版。
けっこう古い本といえばそうなのだけど
ものすごく古い本というわけでもなくて。
たかが20年前の本だけど新品はなくて
中古本が安くネット販売されていた。
新品を売りたい著者や出版業界の人には申し訳ないけれど
資源を大切にするという側面で考えた場合に
まだ読める中古本が市場にあるならそちらがいいと考えるので
個人的には全く問題ないのだけれど。。。
ただ、先日の石田衣良さんのポッドキャストでも言ってたけど
しょうもないけど売れる本が重版されちゃう時代だから
良書なのに絶版になってしまうケースもけっこうあるという話で
詰まるところは「いい本を見つけたら即買いしましょう」とのことで
これは激しく同意。
わたしの場合も少し当てはまるケースがあったので
その話はまた今度・・・。
イラクの小さな橋を渡って
この本のテーマは
「もしも戦争になった時、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった。」
というもの。
「2001年、国連は経済制裁によるイラクの死者の数を150万人と推定するレポートを発表した。
このうちの62万人が5歳以下の子供だった。」
作家の池澤夏樹さんと写真家の本橋成一さんが
戦争が囁かれているイラクを訪れた時の印象と写真をまとめている一冊。
「実に明るい人たちだ。しかもおそろしく親切」
「この国は全体として十数年前の段階で足踏みをしている」
「食べるものもあったし、質も申し分ない」
「小さな橋を渡った時、戦争というものの具体的なイメージがいきなり迫ってきた」
「この子たちをアメリカの爆弾が殺す理由は何もない」
戦争に負けた過去を持ち
小さな頃から反戦を教わった日本人としては
納得のいくメッセージ。
たしかにそう。間違いない。だけど・・・
わたしがこの本を読んで思ったことは
戦争ってそういうものなんじゃないか、ってこと。
確かこの本のなかでアメリカのウォールストリートジャーナルが
9/11で亡くなった人たちを毎回取り上げる記事を出していた件があった。
それと同じように(というかそれ以上の数)アメリカが戦争する国では
罪のない、普通の暮らしをしていた一般人が犠牲になる。
でも、それが戦争というものなんじゃないかな。
アメリカに対する複雑な思い
わたしもアメリカに実際に来てみるまでは
アメリカはジャイアンみたいな国だから好きになれなかった。
実際には留学中、アメリカ(サンディエゴ)に惹かれていく自分を感じて
「アメリカの政治が好きになれないという事実と
アメリカ生活が気に入って住み続けたいというもう一つの事実が
矛盾するのではないか」と少し悩んでいた。
その時仲良くしていたトルコ人大学院生にそのことを話したら
「それは矛盾することではない。
アメリカの政治ややり方が好きになれなくても
アメリカで暮らすことが好きであっても何の問題もない」と言ってくれた。
分からない人には分からないだろうけど
アメリカ(サンディエゴ)には他の土地にはない大きな魅力がある。
その魅力は物質的ではなくて決して日本では手に入らない類のものだ。
ニュースを通じてアメリカをみて反感を覚える人の気持ちもよく分かるけど
そんな人だって何らかの形でアメリカの文化への憧れが好きの気持ちがあるものだ。
音楽とか、映画とか、アメリカ文化の影響を受けてるし
そういったものにどこかしらポジティブなものを感じている。
(そしてこれこそが中国が世界のリーダーになり得ない理由だと思う)
最近で言うとヨガとか。
ヨガはもとはインドだけど、アメリカ的価値観で解釈されて流行ったから
結果、世界的にも広まったのだと思う。
もし日本が世界大戦で勝っていたら(あり得ないけど)
日本人がアメリカのことが好きになれないと感じる理由は
もしかしたらアメリカになれなかったからではないかと思うときがある。
日本が当時狙っていたのは
アメリカのように影響力のある国になること。
(今でも日々アメリカの方向を見て真似を続けているのだけれど)
日本が世界のリーダーになっていたら(飛んだ思い違いだというのは置いておいて)
紳士的に振る舞っていただろうなんて想像するのは甘いと思う。
自国の地位と権力を行使し、守るため、
きっとアメリカのように振る舞っていただろうと思う。
日本が平和を唱え始めたのは戦争に負けたからだ。
そこで平和の大事さを学んだからだ。
どこの国でも自国の被害を痛がって、自国の犯した被害は過小評価するものだ。
アメリカも日本も韓国もそう。
この本はリアルなイラクを文章と写真で魅せてくれる。
人々の平凡な生活からにじみ出る幸せとか、豊富な食べ物や歴史文化のこととか。
偏ったメディアがニュースが報道しない
不当な仕打ちを受けているイラクのリアルな魅力的な姿を伝えてくれる一冊。
わたしが付け加えたいのは、これと同じように、
アメリカの中にもニュースが報道しないアメリカ人やその土地の魅力がある、ということ。
だけどこの本はそんなことは書いていない。
あくまでアメリカはジャイアンとして書かれている。
わたしも弱いものの味方をしたい方だから
池澤氏の気持ちはよく分かるし、共感できた。
ただ、日本のことを「西側の一国」と表現していた(p. 38) ことには
大きな違和感を感じたし、それは間違いだと思う。
日本もイラクもアジア(東洋)に位置している。
日本はそのなかでも極東に位置していて
文化的にも地理的にも西洋との交流が盛んだったイラクよりは
だいぶ東洋だと思うのだけど、この辺りは日本にいる日本人がしやすい勘違い。
英語でいうところのtwinkeeでありバナナ。
(中身は白いつもりだけど見た目はしっかり黄色)
この本のなかでもこの表現が出てくるのは服装についてのところ。
確かに日本は洋服を着ているけれど
そんなうわべの部分、物質的な部分で「西側の一国」と勘違いしたらダメだ。
民主主義?日本は本当に民主主義なのだろうか?
民主主義の前提をとって、実際は別のルールで動いている何かのように見えるのは
わたしがアメリカに長く住みすぎたからかもしれない。
アラブ圏の面白い言葉
本を書くのはエジプト人、印刷するのはレバノン人、買って読むのはイラク人
すごく面白い表現だと思った。
どうしてこのような表現が生まれたのだろうと気になって
イラク系アメリカ人の友達にこんな本読んだよーと連絡してみた。
アレクサンドリア、ダマスカス、バグダッドの三都市は
歴史的にも教育や文化の中心地だったところだということだった。
特にバグダッドはHouse of Wisdom(別名Grand Library of Baghdad)があって
黄金時代には世界中の本がバグダッドに集まってアラビア語に翻訳されていたとのこと。
この本の冒頭にもある通り、ユーフラテス川のインダス文明発祥地のイラク・バグダッド。
それが歴史数百年の国にボロボロにされるのは納得がいかないというのもうなずける話。
いろいろ書いたけど普段知り得ないイラクの生活、
特に戦争が勃発するかもしれないのにものすごく平和に平穏に暮らしてる
2000年台前半のイラクの人々や街並みの写真がたっぷりあるこの本。
楽しませてもらいました。