ミサが執り行われたティファナのSan Miguel教会。 |
Luisとのちょっと早い夕食のあと、車でサンミゲル教会に向かった。
わたしの知る限り、Nadiaの家族は信仰心があつい人たちではなかったけれど、ここ数年Nadiaのママは悩みごとがあってここの教会に足を運んでいたらしいとLuisが教えてくれた。
金曜日にNadiaの棺が置かれて最後のミサ(お葬式)が執り行われた教会。今は棺はなく、Nadiaは灰となってどこかで安らかに眠っている。
メキシコはすべてのことが時間通りに始まらない文化だけど、ミサの時間だけはいつもきっちり行われるということを今回教えてもらった。
時間ぎりぎりに到着したわたしたちは、急いでトイレを済ませて、教会の中に入った。時間ちょうどにトライアングルをすばやく叩くような、カンカンカンカン・・という音がけたたましく鳴って、ミサの始まりを知らせていた。
教会に入るとAfraがわたしたちをすばやく見つけて、早く近くに座りなさいと目配せした。わたしたちは教会の右側中央部分の通路の後ろの前から2列目、ママやAfraや親戚の人たちが座っている席のうしろの長いすに腰を下ろした。
約1時間弱続いたミサはもちろんスペイン語で、わたしのスペイン語力とカトリックの知識ではお説教の内容はほとんど分からなかったけれど、ミサの始めと最後にNadiaの長い氏名が読まれたことは分かった。
時おりAfraがママの肩を抱く場面や、後半ママがティッシュを顔に当てる姿を横から見ていた。
またミサの途中に神父さんが小さく切ったパンが入った器を持ち、信者たちが一列に並びパンを口に入れてもらっている姿を見た。Nadiaの家族やわたしたちはパンをもらいには行かなかったけど、Luisが耳元で「あのパンは何の味もしないんだ」と教えてくれた。
ミサの最後のほうで、神父さんが周囲の人と握手をするよう促し、わたしたちは周りの見ず知らずの方たちや、Nadiaの家族や親戚と握手を交わした。このときのママの顔はやっぱり悲しそうだった。わたしは両手でママの手を握った。パパも参列していて、わたしを見ると悲しそうな顔をしつつもウインクで合図してくれた。
そして、ミサ終了。これですべての儀式はおしまい。Nadiaのママ、Afra、パパともう一度長いハグをする。ママはスペイン語で「…espiritu esta … existancia」と言っていて、「ん?魂が存在する??」となっていたところを、Afraが「Nadiaの魂は今ここにいるのよね、と聞いているのよ」と助け舟を出してくれる。「Si」Nadiaの魂はわたしたちの近くにいるのかもしれない。Afraも「来てくれてありがと。」といつもの早口の英語で言ってくれた。
その後親戚の人たちとNadiaの家族は家に戻ることになり、Luisとわたしも誘われたので、Nadiaの家に久しぶりに立ち寄ることになった。
2009年に撮ったNadiaの家からの眺め。 |
Nadiaの家は細かい点を除けばほとんど変わっていなくて、家の前の急坂は記憶以上に急坂で、よく車が止まっていられると関心してしまうほど。
Nadiaが飼っていた緑色のオウムも元気にしていたし、猫のエイニー(Aini)もシャイな性格のまま、どこかに潜んでいるとのことだった。
家ではそれぞれが椅子に座って、飲み物を飲みながら、近況について質問しあったり、Luisはまだいい人が見つからないのか、というようなお決まりの笑話で家の中が少し暖まった。
Afraは「ママはね、今は親戚がいるからいいんだけど、今夜長距離バスでNayarit(ママの実家のある州)に帰っちゃうから、今夜からママがどんな様子になるか分からない。だから1週間休みを取ることにしたんだ。」
本来なら飛行機で来る距離である親戚たちも、セマナサンタのホリディのせいで飛行機がとれず、36時間かけて長距離バスでの往復となっていた。
Afraは5年前は大手監査法人のDeloitteで働いていたけど、今は家の近所で友人が経営する監査法人を手伝っているとのこと。Deloitteは家から遠くて通勤が大変だっただろうから、今はかなり楽になっているだろうと思う。
親戚一同(Nadiaのおじさん、おばさん、いとこ、姪っ子と甥っ子)は夜9時の長距離バスに乗らないといけないということで8時半ごろにNadiaの家を去っていった。ママも親戚の人たちも「いまだに信じられないわ」と言って、涙のお別れをしていた。わたしたちも親戚の人たち一人ひとりと握手をしてお別れの挨拶をした。
Luisとわたしも同じタイミングで帰ることにした。ママとは静かに長いハグをして、Afraには「疲れているはずだからよく休んで。また近いうちに連絡する。気をつけてね。」と伝えた。Afraは「そうね。もう少し時間が必要だけど・・・Mayは自分の体調のことを第一に考えて元気に過ごしてね。」とお姉さんらしい言葉をかけてくれた。
帰りの車のなかでLuisは、わたしが分かりえなかったスペイン語での会話や人々の反応についていろいろ教えてくれた。サンイシドロの国境まで送ってくれて「また近いうちに会おう。今度はSylviaも一緒に。」と言って、頬に一度キスをして、ハグしてお別れした。
国境を越えて自宅に戻って、無事家に着いたことをLuisに連絡し、Sylviaにも今度は3人で会おうと伝えた。
この時点でわたしのパズルのピースはだいぶ揃っていている。ただし未だに気になっていることは、Alejandroと未だに連絡が取れないこと。残る一つの手段を除いて、今のところ方法がないので、最後の手段ができるかどうか、近日中に確認する必要がある。
Alejandroが知ればかなり悲しむと思う。わたしたち3人は本当に親しかった。(どういうわけかAlejandroとLuisは顔見知りではあるが、親しいわけではない。)
こんなときにNadiaがいてくれたら、代わりにバッチリ連絡とってくれるはずなんだけど・・・。